2001 高齢化に伴う法的課題 ―認知症のある高齢者の万引き―

公開日 2020.07.01

山陰研究プロジェクト2001

期 間:2020~2022年度
代 表:嘉村 雄司(法文学部准教授/企業法)

目的

 本プロジェクトの目的としては、高齢化が進む山陰地域における法的課題を明らかにすることと、民刑双方の学問的考察および実務家等に対する実態調査を経て、多角的な視点から、高齢者をめぐる問題の解決について検討することにある。
 近年、全国的にも高齢者による万引きが社会問題化しているところ、この問題は高齢化が進む山陰地域においても検討しておくべき課題であると思われる。また、万引きの原因として認知症が指摘されていること、認知症のある被疑者に対しては刑事司法上も特別な措置を講じる必要があること、そのような高齢者が家族や福祉による支えを得るためには成年後見制度等民事法上の制度も重要であることから、認知症のある高齢者による万引きについて研究することは法的観点からも重要性が高いといえる。

 

お知らせ / 活動報告 

 

◆進捗状況

昨年度進捗状況

 2019年度は、訴訟になるような事件性のある問題について、地域的な特徴があるかどうかを分析し、それに対して民刑双方の法的な観点から検討することで、解決策提案の可否を多角的に考察した。まず、松江および鳥取の地方裁判所の裁判例を分析し、山陰における訴訟事件の傾向を調べた。刑事事件に関してはそれに加えて検察官にインタビューを行った。少子高齢化に関わる事件の有無や傾向を明らかにするため、民事事件・刑事事件ともに、山陰地域における事件全般をその射程とした。
 調査の結果として、少子高齢化の問題の観点から「高齢者の万引き」というテーマを抽出した。高齢者の万引きは全国的に増加しており、高齢化社会によるところが大きいため、高齢化の進む山陰地域においても関心の高い犯罪類型であると考えられる。

今年度の研究計画と目標

 2020年度は、2019年度の研究成果として、地域課題との関連性が高い法的な課題であることが明らかになった「認知症のある高齢者による万引き」について、民事法学および刑事法学両方の視点から分析を行う。具体的には、高齢者による万引きの事案が争われた刑事裁判例の分析を通して、高齢者に関する刑事司法上の問題を検討するとともに、高齢者の犯罪予防および高齢受刑者の社会復帰の観点から、認知症をはじめとして判断能力が不十分な成年者を保護する制度である成年後見制度について、ヒアリングや裁判例の調査を通して、利用実態や問題点を検討する。
 本プロジェクトは民刑双方の専門知識が必要であるため、研究組織の構成は、代表者を含め、民事法系の研究者2名、刑事法系の研究者2名とした。代表者は、プロジェクトの筆頭として、研究体制のコーディネート、研究状況の総括等、指揮監督を中心に行う。

今年度研究参加者

  • 嘉村雄司(法文学部准教授/企業法)
  • 高橋正太郎(法文学部講師/刑事訴訟法)
  • 大庭沙織(法文学部講師/刑法)
  • 山下祐貴子(法文学部講師/民法)