第2回山陰研究報告会

公開日 2007.03.01

2007年1月31日(水)、第2回山陰研究報告会を開催いたしました!


0403「銀の流通と石見銀山周辺地域に関する歴史学的研究」
小林 准士(島根大学法文学部 助教授)
「近世後期における石見銀山領大森町の運営について」

 近世の石見国迩摩郡大森町(島根県大田市大森町)は、石見銀山のある佐摩村に属し、隣接した銀山町が銀山経営に携わる山師や鉱夫の居住する鉱山町であったのに対し、代官所の領内村々に対する支配を補完する機能を果たした陣屋町であった。
 今回の発表では、大森町の町役人組織の構成と役割分担、および代官所による支配を請け負った郷宿・掛屋・御用達・大森町の目代の地位と役割について報告する。 町役人は、年寄(2~3人)・組頭(5人)・目代(1人)からなり、組頭が大森町内の各組丁(宮前・下市・中市・新町・駒ノ足)を管轄したのに対し、目代は町全体の事務を担当し、年寄は全体を総括した。特に目代は町に置かれた牢の維持などを行い、年貢銀を計量した掛屋、百姓の宿泊施設であった郷宿、陣屋の維持費用を徴収し物資を調達した御用達と同じく、代官所御用を請け負う存在であった。

第2回研究報告会(小林)


0602「絵画資料を通してみた古代出雲神話の成立過程に関する解釈論的研究」
山田 康弘(島根大学法文学部 助教授)
「山陰地方の弥生絵画」

 今回の発表は,山陰地方における弥生時代の絵画資料を概観し,そのあり方について考察を加えるものである。
 まず,はじめに当該地域における弥生絵画を集成した後,絵画が描かれた遺物の種類(キャンバス)ごとに分類し,描かれたモチーフについて検討し,キャンバスとしては,土器(壷)が最も多く,ついて木製品や青銅器に描かれることが多いということを指摘する。
 また,モチーフとしてはシカが最も多く描かれており,それに次いで人物やトリ,サカナが多く描かれていること,複数のモチーフを組み合わせて絵画を構成する事例は,青銅器に多くみられ,土製品や木製品にはあまり見られないことも指摘する。
 モチーフの種類など,このような絵画資料のあり方は基本的に近畿地方のそれと類似するものであり,山陰地方における弥生絵画は,近畿地方の影響のもとに発達したと思われるが,その一方でサカナなど,一部のモチーフが当該地域において,改変ないしは置換されていた可能性を提示する。
 これらの点をもとにして,山陰地方に存在したと思われる弥生時代の「神話」の構造的側面についてもあわせて言及を行なう。

第2回研究報告会(山田) 第2回研究報告会(当日の資料)