第3回山陰研究報告会

公開日 2008.03.03

◎第3回山陰研究報告会を開催いたしました◎

日時:2007年10月3日(水曜日) 15:30-17:30
場所:島根大学法文学部棟2階 汽水域研究センター・図書閲覧室

0701「山陰研究古典文学資料の公開に関するプロジェクト」
0401「山陰地域伝存の古典籍資料に関する基礎的調査研究」
「『松江竹枝』について」
要木 純一(島根大学法文学部 教授)

昨年購入し、現在島根大学図書館蔵(要木研究室配置)の 『松江竹枝』(精軒痴史、大森惟中評 1888)はこれまで知られていなかった手書の詩集。精軒痴史が何者であるかは、調査中。評点を付けた大森惟中(1844-1908)は 明治期、日本の美術工芸発展に貢献した、学者・官吏として著名。フェノロサ『美術真説』の訳者。明治初期の松江の遊里を中心とした風俗を描いた貴重なもの。全国に知れ渡る前の安来節にも触れる。妓女たちの名前と境涯を記しているが、この詩集無くしては、苦界に落ちた彼女たちの記録は残らなかったであろう。大森惟中の評言もおもしろい。まもなく翻刻を「島大国文」に発表。いずれ、全訳・全釈を作るつもりである。

第3回研究報告会(要木1) 第3回研究報告会(要木2)


0404「宗門改め帳帳データベースによる出雲・石見地域の生活様式の比較史研究」
廣嶋 清志(島根大学法文学部 教授)
「石見銀山領の社会階層別出生率と結婚率―真宗の出生率は高いか?」

 浄土真宗門徒についてその教義の影響から堕胎・間引きを忌避するため出生率・人口増加率が高いと研究者によって指摘されてきたが,このことに関して歴史人口学において研究はそれほど多くない。そこで,本研究は島根大学図書館所蔵の熊谷家文書の石見銀山領の宗門改帳を用いてこの命題の検証に取り組んだ。
 真宗の合計出生率は他宗門に比べわずかに高いが,宗門間で平均持高に差があり,宗門別の持高構成を考慮し標準化合計出生率でみると,真宗とそれ以外の差はまったくない。結婚出生率については逆に真宗は他宗門に比べ明らかに低い。これは,持高構成を考慮しても変わらない。また,年齢別有配偶出生率が22-26歳という第1子の多い年齢で真宗が最も低いという年齢形態も特徴的である。
 宗門間で,生涯未婚率,既婚率,死離別率に目立った差があり,真宗はこれらから見て結婚率が高く,有配偶出生率の低さを補い,その結果,出生率において他宗門と差がなくなるという構造をもっているらしい。真宗門徒は結婚出生率を低く統制するという点に表れているように,出生行動について他宗門に比べより合理的な意識と行動様式を持っていた,この結果,出生率を低く維持しながら結婚率を高める自由度を持つことができたのではないだろうか。

第3回研究報告会(廣嶋1) 第3回研究報告会(廣嶋2)


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