第7回山陰研究報告会

公開日 2010.03.01

◎第7回山陰研究報告会を開催いたしました◎

日 時:2009年11月25日(水)
場 所:島根大学法文学部棟2階 多目的室(207)

0802 プロジェクト名「山陰地域古典文学資料の公開に関するプロジェクト」
報告者:要木純一 教授(島根大学法文学部)
報告内容:「『松江竹枝』と作者篠田謙治-明治初期の島根漢詩-」

 島根大学附属図書館所蔵の『松江竹枝』(精軒痴史著 大森解谷評 明治二十一年(1888)・法文学部要木研究室配置)は、これまで知られていなかった漢詩集(手稿本)である。主に明治初期の松江の遊廓を題材とした、貴重で興味深い作品が収められている。
  妓女たちの本名と簡単な境涯も附されており、この詩集無くしては、苦界に沈んだ彼女たちの記録は残らなかったであろう。全国に知れ渡る前の安来節にも触れている。
  調査の結果、著者精軒痴史は、島根県に官吏として赴任した篠田謙治(元治元年(1864)江戸生)という人であることが判明した。当時の『山陰新聞』にも、彼の詩がいくつか載せてある。
  この篠田謙治についてこれまでわかったことを紹介したい。また、『松江竹枝』所載の詩を通じて、明治初期の松江の風俗についても考察する。

第7回研究報告会(要木)


0803 プロジェクト名「 初代松江市長・福岡世徳文書の解読・翻刻・研究と 『初代松江市長・福岡世徳―史料と研究』(仮題)の刊行」
報告者:竹永三男 教授(島根大学法文学部) ,沼本 龍 氏(松江市教育委員会文化財課)
報告内容:「初代松江市長・福岡世徳文書研究2年目の成果 ―『第一次桂太郎内閣の府県廃合計画』・『山陰地域における鉄道敷設運動の起源』の検討を中心に―」

 3年間の研究期間の中間年にあたる今年度は、課題を3つの具体的課題を設定して研究を進めた。中間報告では、それぞれの研究課題ごとにその要点を発表する。

1.『公務手帳』第4冊(1896年~1897年の5回の出張記事)の翻刻(全員)
  その内容は、鉄道・兵営・農事試験場の誘致活動(東京・広島出張)、英照皇太后大喪参列(京都)、松平直亮伯爵見送り(根雨町)であり、松江市長としての地域振興策実現のための努力、出張を利用した教育機関等の視察、陳情活動の詳細を確認できる。
2.第一次桂太郎内閣の「府県廃置法律案」(1903年)に係る上京活動の研究(竹永三男)
  桂内閣が行財政整理の一環として府県廃置を検討しているとの情報を得た福岡市長は、上京して政府要路に接触、情報収集と陳情に努めた。その目的は、この法案での島根県の処遇と松江市にある県庁はどうなるかを確認し、県都としての位置を守ることにあった。福岡世徳『在京日記』はその活動の一部始終を記しており、関連史料の分析と併せて、地方都市市長の陳情活動の特徴、府県の枠組の実態的機能など、近代政治史・都市史研究に関する興味深い問題を検討することができる。
3.福岡世徳市長の松江市振興策の要である鉄道敷設運動の研究(沼本龍)
  島根県における鉄道敷設運動に関する研究は、『松江市誌』、『島根県議会史』以来ほとんど進んでおらず、運動の出発点自体も不明なままであった。そこで、『山陰新聞』ほかの新聞史料や県内外の史料調査に基づいて、先ずは、島根県における鉄道敷設運動の起源とその内容の究明に努めた。その結果、主体的な鉄道敷設運動は、1891年に開始されたことが確認できた。

  以上の3つの課題は、初代松江市長・福岡世徳の史料研究に発しながら、これを全国的な研究に発展させる展望をもつものであり、今回、中間報告として経過と内容を発表することで、今後の研究課題を明確にしたい。

第7回研究報告会(竹永) 第7回研究報告会(沼本)