銀の流通と石見銀山周辺地域に関する歴史学的研究〔科学研究費プロジェクト〕

[科学研究費プロジェクト] 

期 間:2007-2008年度( 3年間)
代 表:小林 准士 (法文学部准教授・日本史学)

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研究会・報告会 

概要

◆目的
 16世紀前半に石見銀山が発見された後、生産された銀はほとんど国外に移出されたが、漸く1570年代前後から国内で地域差を伴いつつ流通し始めることが明らかにされてきている。このような経緯をたどる理由を、石見銀山周辺地域の政治的・経済的状況、日本国内における銀の流通条件、明国内における貨幣流通の状況という3者の相互関連性を追究することで明らかにする。 また、銀山領と日本国内の各地域との関係について、政治的側面と経済的側面の双方を検討する。さらに、銀山領地域の歴史的特質を、支配機構、村々の組織、人口機構、産業構造の各側面について検討する。支配機構と村々の組織に関して言えば、奉行所あるいは代官所の支配機構及びその変遷の究明、銀山附役人の出自・技能・身分・行政や文化の面での役割などに対する多面的な分析、郷宿・掛屋・用達などの御用請負人と領内の村々(郡中、組合村として結集)との関係に対する分析などが課題となる。すでに幕末の村々の宗門人別改帳の分析を通じ、領内の人口学的特徴が明らかにされつつあるが、その特徴が生じる理由を主に産業構造との関係に焦点をあてて分析する。これらの分析を進めることで、銀山を支えた社会構造と国家支配の全体像と、東アジアレベルにおける銀流通の特質が明らかになることが期待される。

◆2007年度の研究計画と目標

  • 年度中に2回、研究会を実施する。
  • 中国における銀貨の非市場的側面と市場的側面の分析、明代における銀行業の実態と外国銀の流入に関する研究の整理を行う。
  • 中近世移行期における銀の流通について調査するため、銀の積み出し港であった温泉津と石見銀山の実態解析を行う。
  • 石見銀山発見を挟んだ石見国の大内領国時代を中心に、石見銀山に関係する支配・信仰・地域交通・技術関係、あるいは石見銀山開発の影響を受けたと考えられる諸事件・諸事象(対外関係的なものを含む)に関する文書・記録データを収集する。
  • 石見銀山領のたたら製鉄関係資料である中原家文書(美郷町)、森山家文書などの史料調査を行う。
  • 島根大学付属図書館内の熊谷家文書(島根県大田市大森町)にある宗門人別改帳のデータベース化の作業を引き続き行い、また宗門別の結婚率、出生率、死亡率の分析を行う。
  • 島根大学付属図書館所蔵の林家文書(同大田市五十猛町)の未整理分の整理作業も引き続き行う。林家文書については、同家(自宅)所蔵分の概要把握調査を行う。
  • 大田市立図書館所蔵の熊谷文書のうち、掛谷・用達・郷宿関係の史料、および銀山経営、鉄山経営、買請米に関わる史料等について、デジタルカメラによる撮影と解読作業を引き続き行う。

研究参加者

※プロジェクト代表者は★を付す。

  • 小林 准士 (法文学部准教授・日本史学)★
  • 佐々木 愛(法文学部准教授・中国史学)
  • 丸橋 充拓(法文学部准教授・中国史学)
  • 廣嶋 清志(法文学部教授・人口学)
  • 相良 英輔(教育学部教授・日本史学)
  • 岩城 卓二(京都大学准教授・日本史学)
  • 本多 博之(広島大学大学院准教授・日本史学)
  • 鳥谷 智文(松江工業高等専門学校准教授・日本史学)