「出雲国」成立過程における地域圏の形成と展開にかんする総合的研究

山陰研究プロジェクト1201

期 間:2012-2014年度
代 表:大橋 泰夫(法文学部教授)

2013年度

【昨年度までの進捗状況】

(1) 考古学的検討

  • 廻原1号墳については、墳丘の規模・形態・構造を明らかにすることを目的に、墳丘の北東部および西部において調査区を設定した。その結果、墳丘裾の位置を特定し、古墳の規模がおおむね一辺10m程度となり、方墳に復元しうる材料を得た。また、墳丘の築造方法についても、その一端を明らかにした。石室については、大手前大学史学研究所に依頼して詳細な三次元計測を実施した。
  • 山陰地域の後期古墳研究についての現状整理を行った。また、古代出雲における製鉄の状況を理解するため、古墳時代後期から平安時代前半において、箱形製鉄炉による操業が行われた製鉄遺跡の集成作業を行った。
  • 出雲国府関連遺跡について、関連資料の収集作業を行い、成果の一部は論文として発表した。

(2) 文献史学的検討

  • 松江市文化財課史料編纂室と合同で松江神社所蔵延喜式の調査を行った。松江藩による延喜式の校訂・出版の経過とその背景の一端が明らかになることが期待される。
  • 武田科学振興財団杏雨書屋・大阪府立中之島図書館で雲州本延喜式および藍川慎の著作の調査を行った。
  • 7世紀から11世紀までの古代出雲に関する文献史料を集成した。

研究成果の発表:普及啓発事業

 2013年度の研究成果について、島根大学ミュージアムと共同で市民向けの講演会を行った。

島根大学公開講座「考古学・歴史学からみた先史・古代の出雲IV」
(平成25年度島根大学ミュージアム市民講座第2ステージ)

主催:島根大学ミュージアム・島根大学法文学部山陰研究センター「『出雲国』成立過程における地域圏の形成と展開にかんする総合的研究」プロジェクト・島根大学戦略的研究「『古代出雲』における王墓の出現と展開に関する総合的研究」プロジェクト)

会場:松江スティックビル市民活動センター

  • 及川 穣「隠岐諸島黒耀石原産地の踏査報告」2013年10月26日
  • 平郡達哉「先史墓制からみた韓半島と出雲」2013年11月23日
  • 角田徳幸「古代製鉄の系譜 −日韓製鉄史の比較から−」2012年12月14日
  • 会下和宏「石器から鉄器へ −弥生時代・山陰地域の道具の移り変わり−」2012年12月21日
  • 大日方克己「国司からみた古代の出雲国」2014年1月25日
  • 大橋泰夫「建物配置・構造からみた出雲国庁の実態」2014年2月1日
  • 岩本 崇「山陰の古墳と青銅鏡」2013年3月8日

2012年度

【2012年度の計画・目標】

  • 「出雲」における考古学および古代史の史資料の収集と再検討を行う。
  • 廻原1号墳の発掘調査と資料整理作業を行う。
  • 諸国の国府成立の実態を究明するために、各地の国府跡の資料調査を進める。
【2012年度の進捗状況】

(1) 考古学的検討

  • 廻原1号墳の発掘調査を進め、墳丘を中心に広く三次元計測も行い、墳丘盛土から古墳時代終末期(7世紀後半~末)の須恵器が出土し、古墳築造年代の上限を考える材料を得た。島根考古学会の研究発表で、廻原1号墳の歴史的意義についても言及した。また、廻原1号墳の整理作業を行い、発掘調査報告書作成に向けて基礎作業もおこなった。

  • 列島各地の弥生墳丘墓に関する資料収集を行い、比較研究を進めた。

  • 山陰地方の古墳出土資料について広く検討を試み、古墳資料から集団どうしが交流する基盤となるエリアが時期的に推移する一方、ある程度の固定性を有する可能性を導出した。

  • 山陰地域の後期古墳研究についての現状整理を行った。また、古代出雲における製鉄の状況を理解するため、古墳時代後期から平安時代前半において、箱形製鉄炉による操業が行われた製鉄遺跡の集成作業を行った。

  • 出雲国府関連遺跡について、関連資料の収集作業を行い、成果の一部は論文として発表した。

(2) 文献史学的検討

  • 松江市文化財課史料編纂室と合同で松江神社の調査を行い、松平家奉納の雲州本延喜式のほか、「延喜式序藁」と題された付属する文書群を見出した。松江藩による延喜式の校訂・出版の経過とその背景の一端が明らかになることが期待される。

  • 武田科学振興財団杏雨書屋・大阪府立中之島図書館で雲州本延喜式および藍川慎の著作の調査を行った。

  • 7世紀から11世紀までの古代出雲に関する文献史料を集成した。

【研究成果の発表:普及啓発事業】

 2012年度の研究成果について、島根大学ミュージアムと共同で市民向けの講演会を行った。
 島根大学公開講座「続々・考古学・歴史学が語る先史・古代の『出雲』」(平成24年度島根大学ミュージアム市民講座第2ステージ)
 会場:松江スティックビル市民活動センター

  • 及川 穣「隠岐産黒耀石の開発・利用からみた先史時代の山陰地域」2012年10月6日
  • 角田徳幸「加茂岩倉銅鐸にみる弥生時代の鋳造技術」2012年12月1日
  • 会下和宏「弥生時代の墳丘墓と日本海交流」2012年12月15日
  • 大日方克己「古代の日本海交流-渤海と山陰・出雲」2013年1月12日
  • 大橋泰夫「古代のクラからみた国郡制の形成」2013年2月9日
  • 岩本 崇「『出雲』における古墳時代の終焉」2013年3月23日

2012年度以前

【プロジェクト開始前の活動について】

(1) 考古学的検討

  • 廻原1号墳の発掘調査を進め、概要を報告し、研究発表で廻原1号墳の歴史的意義についても言及した。また、廻原1号墳の整理作業を行い、発掘調査報告書作成に向けて基礎作業もおこなった。
  • 漢代併行期における日本列島や東アジア各地の墳墓資料を集成・検討をおこない、その成果の一端は論文として公表した。
  • 出雲国府関連遺跡について、関連資料の収集作業を行い、成果の一部は論文として発表した。

(2) 文献史学的検討

  • 平安時代までの古代出雲に関する史料の収集を進め、国司に関する史料はほぼ網羅、整理して、国司表としてまとめた。
  • 出雲国風土記の諸写本と注釈書の調査・収集、延喜式など古代出雲にかかわる史料、それに関する写本・版本・注釈書・研究書の調査・収集作業などを行い、分析にも着手した。

廻原1号墳作業風景

廻原1号墳作業風景