『出雲国風土記』の学際的研究

山陰研究プロジェクト1601

期 間:2016-2018年度
代 表:大橋 泰夫(法文学部教授 / 考古学)

目的

 本研究では、文献史学と考古学の学際的研究によって、『出雲国風土記』に記された官衙・寺院などの所在地・構造に関わる研究を行う。 あわせて、他地域の史料(『常陸国風土記』『上野国交替実録帳』)と考古学的成果の比較検討から、出雲国を含めた諸国の官衙・寺院の構造の解明を目指す。

 『出雲国風土記』に記された官衙・寺院などの所在地や構造が明らかになることは、地域史にとどまらず、古代日本を考える上でも重要な成果となる。

 

研究発表・報告

  • 2016年度

進捗状況

【これまでの研究状況】

[2016~2018年度]

 これまでに、雲南市郡垣遺跡が『出雲国風土記』に記された移転前の大原郡家であった可能性が高い点を、考古学と文献史学の学際的研究によって明らかにしている(志賀崇・大橋泰夫・平石充ほか2014『郡垣遺跡Ⅲ-旧大原郡家等範囲確認調査報告書1-』雲南市教育委員会)。

[2019年度]

 これまでに、雲南市郡垣遺跡が『出雲国風土記』に記された移転前の大原郡家であった可能性が高い点を、考古学と文献史学の学際的研究によって明らかにした。

 また、『出雲国風土記』に記された神門郡家周辺について、前史からの変遷を把握できるようになり、古志本郷遺跡が神門郡家であり、後に移転していることを推定した。

 『出雲国風土記』と『常陸国風土記』『上野国交替実録帳』に記された内容と考古学的成果との検討によって、官衙・寺院と駅路などの交通との関係が重要であることを確認した。

島根大学における研究会

 

【2016年度の計画・目標】

 2016年度は、メンバー全員で『出雲国風土記』に記された官衙遺跡等を巡検し研究会を実施する。 今年度のテーマは「郡家の移転」であり、研究会では次のような内容を予定している。

・志賀 崇:郡垣遺跡の報告と各地の事例からみた検討。出雲国内の大原郡衙、黒田駅など。

・平石 充:『出雲国風土記』からみた郡家の移転。

・堀部 猛:常陸国風土記に記された郡家、駅家の移転記事についての整理

・藤木 海:考古学からみた官衙の移転事例

  また、県内メンバーで定期的に会合をもち、『出雲国風土記』に記された官衙・寺院などの所在地の検討会を行う。

 

◆【2019年度の計画・目標】

 これまでに行ってきた神門郡家周辺に関わる研究をまとめ、その成果と『常陸国風土記』、『上野国交替実録帳』に記された内容との比較・検討するために、島根大学において研究会を実施し、研究書として成果を公表する。研究成果については、松江市内において市民向けの講演会を実施する。

 今年度から、島根郡家に関わる検討作業に着手し、メンバー全員で『出雲国風土記』に記された島根郡家に関わる官衙遺跡等を巡検し、現地確認と出雲国風土記の記載内容について検討する。

研究参加者

※プロジェクト代表者は★を付す。

  • 大橋泰夫(法文学部教授 / 考古学) ★
  • 平石 充(島根県古代文化センター・専門研究員/ 文献史学)
  • 志賀 崇(雲南市教育委員会・職員/考古学)
  • 堀部 猛(土浦市立博物館・学芸員/文献史学)
  • 出浦 崇(伊勢崎市教育委員会・職員/考古学)
  • 藤木 海(南相馬市教育委員会・職員/考古学)
  • 江角 健(出雲市市民文化部文化財課・職員/考古学)
  • 三宅和子(松江市役所埋蔵文化財調査室・学芸員/考古学)
  • 會下和宏(島根大学総合博物館・教授 / 博物館学)

(9名)