産官学連携による開発コミュニティを中心とした オープンソース・ソフトウェアの先端的研究体制の構築〔文部科学省・特定教育研究〕

[文部科学省・特定教育研究] 

期 間:2010-2012年度 
※ 島根大学特定研究(2008年度~)より刷新
代 表:野田 哲夫(法文学部教授・情報経済論)

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研究会・報告会 

 

概要

◆概要

〔全体計画〕

 島根大学においてOSSの最新技術の研究を企業や組織を超えた国際的な開発コミュニティとの 連携を中心とした産官学連携で行う。
 研究分野は、ソフトウェア開発言語やオペレーティング・システム等の基礎部門から開発手法などの応用分野までのOSSに関する技術研究分野と、OSSライセンスの研究やビジネスモデルの研究を中心としたOSSの産業組織研究分野から構成し、OSSの安定的な動作保証や国際標準化も含めた仕様の策定、また、OSSを活用したビジネスモデルの国内外の事例調査・論点整理とあわせ、ライセンスの整理や特許紛争における論点整理を通じて、OSSビジネスの生産性と産業モデル分析を行う。
 また、この分野でのコミュニティの人材を積極的に大学に受け入れ、大学のOSS研究者と共同で研究を進める体制を構築し研究成果に結びつけ、事業期間中に「技術研究部門」と「産業研究部門」からなる産官学連携の教育研究機関「OSS先端教育研究センター(仮称)」を島根県松江市に設立し、OSSの先端的研究体制の構築を確実なものとする。   
 なお、このセンターを通じ、継続してOSSの先端的研究を推進し、併せて、IT技術者の育成 等の人材育成及び地域産業振興への波及を促進することとしている。

〔平成24年度に実施する事業内容〕

[オープンソースRubyの開発支援] オープンソースRubyの高度化・安定化を図るために引き続き開発コミュニ ティによる開発を支援する。特にISO標準を取得したRubyのビジネス分野へのさらなる応用に向けて共用スペース を用いてRubyの高度化・安定化およびマルチプラットフォームでの動作確認、Rubyの各種OSでの安定動作の確認 を進める。

[オープンソースによる開発・公開と運用] オープンソースの高度化・安定化のために、オープンソースで開 発されたプログラムを応用し、その高度化・安定化の研究を進める。具体的には島根大学で開発された既にオー プンソース化されている「発達障害の診断ツール」と「評価情報データベース」「SNSシステム」の機能拡張とバ ージョン管理をコミュニティと共同して行い、これをモデルケースとしたオープンソースの安定化に関する研究 を行う。

[オープンソース開発スタイルのモデル分析構築] オープンソース・ソフトウェアを活用と地域産業振興に果 たす役割と可能性に関する実証的・理論的研究を進める。具体的にはマクロ経済成長モデルにおけるオープンソ ースを含めたソフトウェア生産性の研究と成長モデルの構築、また地域経済とを連関させるモデルを用いた労働 生産性の実証分析を進める。

[オープンソースの国際的共同研究体制の構築] オレゴン州立大学、国連大学MERIT:Maastricht Economic and social Research and training center on Innovation and Technology、中国・清華大学国情研究中心との 交流を中心に、海外の産官学のオープンソース・ソフトウェアの研究機関との連携、共同研究を進める。これら の研究機関と共同で開催されてきたオープンソースに関する国際共同研究会(平成20年度島根大学、平成21年度 韓国・徳成大学)の開催を今年度は中国(清華大学)において行う。

◆本研究に関係するこれまでの準備状況など

2006-2007年度の山陰研究プロジェクト参加者を主要な参加者とする。

研究成果

  • 2011年度(※プロジェクトWebページ)
  • 2010年度(※プロジェクトWebページ)

2009年度研究成果

◆2009年度計画

  • [オープンソースRubyの開発支援]
    オープンソースRubyの高度化・安定化を図るために引き続き開発コミュニティによる開発を支援する。具体的にはコミュニティと共同した開発合宿の開催と、共用スペースを用いてRubyの高度化・安定化およびマルチプラットフォームでの動作確認のためのテストベッドの提供を行う。
  • [オープンソースによる応用開発] 
    オープンソースの高度化・安定化のために、オープンソースで開発されたプログラムを応用する研究を進め、アプリケーション開発に結び付ける。具体的には「発達障害の診断ツール」の開発を島根大学で行い、その成果をコミュニティにも還元する。
  • [オープンソース開発スタイルのモデル分析構築]
    産官学と開発コミュニティの連携によるオープンソース・ソフトウェアを活用した新事業創出(ビジネスインキュベーション)・起業モデル(インキュベーションモデルなど)についての考察や教育研究機関としての大学の果たす役割及び社会還元に関しての検証を行い、地域産業振興に果たす役割と可能性に関する実証的・理論的研究を進める。特に、オープンソース・ソフトウェアの開発スタイルをビジネスモデルに結びつけるための開発者のモチベーションの計測と生産性を連関させるモデルを構築する。
  • [オープンソースの国際的共同研究体制の構築]
    昨年度のオレゴン州立大学との交流(現地セミナーの参加や研究者招聘によるシンポジウムの開催)に続き、海外の産官学のオープンソース・ソフトウェアの研究機関との連携、人材の相互交流を進め、共同研究の体制を構築する。特に、欧州でオープンソースに関する総合的研究を進めている国連大学MERIT:Maastricht Economic and social Research and training center on Innovation and Technologyと英Sussex大学Science and Technology Policy Researchに関してはコンタクトを進めているので、我々の研究のレビューや研究者の招聘による国際共同研究会の開催を行う。

◆2009年度の研究成果

  • [オープンソースRubyの開発支援]
    「Rubyの標準仕様作成の課題」はまつもと氏を理事長とするRubyアソシエーションとIPA(独立行政法人情報処理推進機構)オープンソフトウェアセンターと共同で進められており、島根大学としては「マルチプラットフォームでの作動の課題」のためのRuby開発のテストベッド提供を進めた。一方、Rubyのビジネス仕様確立のために、中国経済産業局が主催する「Rubyビジネス活用研究会」と協力して、他言語と比較したRubyの生産性の測定を行った。次年度はこれを基に、ビジネス仕様標準化とビジネス活用ライブラリーの整備を行う予定である。
  • [オープンソースによる応用開発]
    縄手研究室において発達障害診断ツールをRubyで開発し、オープンソース化の準備を進めている。また、島根大学の教員評価システムのRubyでの開発とオープンソース化に協力し、これを対象とした安定化の研究を産学協同で進めている。
  • [オープンソース開発スタイルのモデル分析構築]
    [オープンソースの国際的共同研究体制の構築]

    オープンソースによるビジネスモデルの検討に関して国内外の研究者(米オレゴン州立大学、国連大学技術経済研究所、韓国延世大学など)の招聘・研究会の開催、これらの研究者と共同した全国的な開発者アンケート調査を行い、オープンソースの生産性に関する理論的研究と実証的研究を進めた。研究成果の発表を国内の学会、The 5th International Conference on Open Source Systems (Sweden)などの国際学会で報告し、また、国連大学技術経済研究所、韓国延世大学より研究者を島根大学に招聘し、シンポジウムを開催した。 さらに、2010年6月に米国South Bendで開催予定のThe 6th International Conference on Open Source Systemsにおいて、韓国、中国のOSS研究者と共同でOpen Source Policy and Promotion of IT Industry in East Asiaを主催し、これらの研究成果の発表とディスカッションを行うことが決まっている。オープンソースの研究に関して、島根大学が国内やアジアの研究の中心となりつつある。

 今後は、欧米で進んでいるオープンソースに関する理工系・社会科学系の融合した共同研究をモデルとしながら、島根大学がイニシアティブを取ってアジア地域におけるオープンソースに関する研究体制の構築を、地域の情報産業や行政機関と連携しながら進める方向である。

 

研究参加者

※プロジェクト代表者は★を付す。

<学内参加者>
野田 哲夫★ 法文学部(法経学科)・教授
石川 健 法文学部(法経学科)・教授
平川 正人 総合理工学部(数理・情報システム学科)・教授
鈴木 貢 総合理工学部(数理・情報システム学科)・教授
六井 淳 総合理工学部(数理・情報システム学科)・教授
縄手 雅彦 総合理工学部(数理・情報システム学科)・教授
阿久戸 敬治 産学連携センター(知的財産創活部門)・教授
丹生 晃隆 産学連携センター(連携企画推進部門)・准教授
高清水 直美 評価室・講師
谷花 佳介 法文学部・特別研究員
蔡 麗明 法文学部・特別研究員
<プロジェクト推進機構研究員>
松本 行弘 (株)ネットワーク応用通信研究所・フェロー,
島根大学・客員教授
<研究協力者>
吉田 智子 京都ノートルダム女子大学・教授
Jonathan R. Lewis
(ジョナサン R・ ルイス)
一橋大学社会学研究科(地域社会研究)・教授
李 尚黙
(イ・サンムク)
韓国・徳成女子大学・教授
八田 真行 駿河台大学経済学部・専任講師
Shane Coughlan
(シェーン・コークラン)
Asia Representative of OpenForum Europe
大堀 健太郎 大堀・山本法律事務所 / 弁護士弁理士
脇谷 直子 広島修道大学・准教授
佐藤 美樹代 山口大学大学院博士課程

<アドバイザリーボード>
しまねOSS協議会
島根県商工労働部
情報産業推進室
しまね産業振興財団

(16名)